毎年6月になると、保護者はきまって同じ言葉を耳にします。「夏休みの学力低下に気をつけて」。少し不安をあおる響きですが、研究の裏づけは確かにあります。長い休みのあいだにまったく本を読まないと、秋には数週間分の読む力が失われてしまうことも。でも、誰もはっきり言わないことがあります。その対策はプリントの束でも、20分読むごとにシールを貼る読書記録でもありません。夏の「読む力の後退」を防ぐいちばんの味方は、ただ一つ ― 子ども自身が本を開き*たくなる*こと。この記事では、その「読みたい気持ち」を、無理なく、現実的に、そして夏らしいゆるさを残しながら育てていく方法をお話しします。
「夏休みボケ」の正体──本当のところ、何が起きているの?
夏休みのような長いお休みの間、練習をしないでいると、身につけた学力──とくに読む力が落ちてしまうことがあります。これがいわゆる「夏休みボケ(サマースライド)」です。研究によると、子どもによっては夏の間に読解力が一か月分、あるいはそれ以上あと戻りしてしまうこともあるのだとか。しかも、この小さなつまずきが毎年積み重なっていく、というのですから、ちょっと怖い話ですよね。
でも、ここからが安心できる話です。実はこの後退は、ほとんどの場合ちゃんと防げますし、必要な手間も想像よりずっと少なくてすみます。夏の間にほんの数冊の本を読んだ子は、たいてい今のレベルをきちんとキープできるのです。ドリルづけの家庭学習を始める必要はありません。目指すのは、お子さんが「楽しい」と感じる言葉に、気負わず、こつこつ触れ続けること。それだけです。
多くの研究では、夏休み中に4〜6冊ほど読めば、測定できるレベルの読む力の低下は防げるとされています。だいたい2週間に1冊のペース。涙ひとつ流すことなく、じゅうぶんクリアできる目標です。
「読める本」より「読みたい本」を
夏の読書をいちばん早くダメにするのは、「この子のためになるから」という理由で、本人にとっては退屈な本を渡してしまうこと。逆に、いちばん早く読書を好きにする方法は、その正反対です。子どもが夢中になっているものをそのまま追いかけてあげましょう。恐竜、サッカー、ユニコーン、マンガを描くこと、火山のしくみ——お子さんの目がキラッと輝くテーマなら、それについての本が必ず一冊は、いえ十冊はあるはずです。
この夏だけは「読解レベル」のことは一度忘れてしまってかまいません。マンガや絵物語だってりっぱな読書。なぞなぞ本もOK。お気に入りの一冊を四十回目でもまた読む——これも間違いなくカウントに入ります。くり返し読むことで、すらすら読む力と自信が育つからです。車の中で聴くオーディオブックだってれっきとした読書。今いちばん大切なのは、読書記録をつけることではなく、勢いと「楽しい」という気持ちを保つことなのです。
- 「もし本になっていたら読みたいもの」を3つ挙げてもらい、その本を一緒に探してみる。
- 子どもが自分で選んだマンガや絵物語、「かんたんそうな本」に「いいよ」と言ってあげる。
- 絵本、児童書、雑誌、なぞなぞ本——いろんな本をひとつのカゴにまとめて、手の届くところに置いておく。
- くり返し読むことも、オーディオブックも、しっかり読書として認める。近道ではなく、ちゃんと力になります。
「いつもの流れ」に読書を組み込む
夏休みは生活リズムが崩れがち。だからこそ、読書の「きっかけ」を決めておくと助かります。きっちりしたスケジュールを組むのではなく、毎日必ずやっていることに読書をくっつけるのがコツです。たとえば、外の日差しがきつい時間帯のお昼ごはんのあと、プールの木陰でひと休みするとき、そして定番の寝る前。すでにある習慣に結びつけておけば、「そろそろ読もうか」といちいち思い出したり、子どもと交渉したりする必要がなくなります。
一回あたりは短く、「まだ楽しい」うちに切り上げるのが大切です。イヤイヤの30分より、集中して笑顔で過ごせる10分のほうがずっと効果的。夜の寝かしつけの流れを立て直したいなら、読み聞かせを毎日の習慣に変えるコツにすぐ使える声かけの例やちょっとした工夫をまとめてあるので、そちらものぞいてみてください。
夏の読書の「拠点」は図書館に決めてしまおう
ほとんどの公立図書館では、夏になると無料の読書プログラムが開かれています。ちょっとしたごほうびがもらえたり、イベントがあったり、読書チャレンジに参加できたり。じつはこれ、親の手間がいちばん少なくて効果の高い方法なんです。毎週あたらしい本を選ぶというワクワク感が興味を保ってくれますし、読んだ冊数を記録するしくみがそのままやる気につながるので、「早く読みなさい」とせかす必要もありません。
できれば週に一度は通ってみてください。子ども自身に貸出カードを持たせて、自分で本を選ばせてあげましょう。たとえその選び方が気まぐれに見えても大丈夫。「自分で選んだ」という気持ちこそが、いちばん大切なのですから。
目指すのは「記録表」ではなく「本が好きな子」
このガイドから一つだけ持ち帰ってほしいことがあります。それは、あなたは「足りない学力を補っている」のではなく、「習慣を育てている」ということ。夏の学力の後退を防ぐというのは、実は嬉しいおまけにすぎません。本当の目標は、記録表に言われたからではなく、自分から本に手を伸ばす子を育てること。子どもの興味を追いかけ、読み聞かせの時間は無理のない小さなものに保ち、あとは図書館に大いに頼りましょう。
そして、わが子が絶対に大好きになる一冊がほしいなら——なにしろ、その子自身が物語の主人公なのですから——オリジナル絵本が、本に気乗りしない子を「もう一ページだけ読んで!」とせがむ子に変えるきっかけになってくれます。この夏がどんな夏になるとしても、まずは「楽しい」を第一に。力は、あとから自然についてきます。
Key takeaways
- 学力低下は本当に起こりますが、防ぐのはかんたん。休み中に楽しく読める本が4〜6冊あれば、読む力はしっかり守れます。
- 読解レベルよりも、子どもの「好き」を優先しましょう。マンガもなぞなぞ本も、お気に入りの繰り返し読みも、オーディオブックも、すべて立派な読書です。
- 毎日の習慣にちょっとした読書のひとときを結びつければ、催促も交渉もいりません。
- 地元の図書館を、手間いらずの読書エンジンに。本選びは子どもにまかせてあげましょう。
- 目指すのは記録を埋めることではなく、自分から本を手に取りたくなる子どもの姿です。
Frequently asked questions
学力低下を防ぐには、うちの子は何冊読めばいいの?+
研究では、夏休み中に4〜6冊ほど読めば、測定できるほどの読む力の後退は防げるとされています。だいたい2週間に1冊ほどのペースです。多くの保護者が思うよりずっと少なく、ドリルもいりません。
オーディオブックやマンガも「読書」に数えていいの?+
はい。オーディオブックは語彙力や読解力、そして物語を愛する心を育てます。マンガにも高度な読む力がたくさん詰まっています。夏休みはとくに、楽しさと勢いがいちばん。どちらもしっかり読書に数えてあげてください。
うちの子は本を嫌がります。ケンカにならず始めるには?+
読解レベルではなく、その子の「大好きなこと」から始めましょう。時間は短くてかまいません。しぶしぶの30分より、楽しい10分です。寝る前やお昼のあとなど、毎日の習慣に結びつけ、図書館では自分で本を選ばせて「自分のもの」と感じさせてあげてください。
読まない日が続いて、リズムが崩れたら?+
夏休みなら、それはごく普通のこと。目指すのは完璧な連続記録ではなく、ゆるくても続けることです。罪悪感を持たず、翌日また読書のひとときを始めましょう。休み全体でほんの数冊読めれば、それで十分なのです。
Written by The Hello Storybook Team, 親であり、書き手であり、物語の紡ぎ手.
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