何十年も前、教育学者のルディーン・シムズ・ビショップは、児童書のあり方を変える一つの言葉を残しました。「本は窓であり、鏡であり、そして開け放たれるガラス扉である」。窓からは、子どもは他の誰かの人生をのぞくことができます。鏡には、自分自身の姿が映ります。多くの子は「窓」にはたっぷり出会えます。けれど「鏡」——自分と同じ姿で、同じように暮らす主人公——に出会うことは、ずっと少ない。そしてその鏡には、静かで大きな力があるのです。
「鏡になる絵本」が子どもに与えてくれるもの
自分と同じ肌の色、同じ髪、同じ家族のかたち、同じ心配ごとを抱えた主人公に出会ったとき、子どもは文字の奥にあるメッセージを受け取ります。「わたしみたいな子も、物語に登場していいんだ」「わたしみたいな子のために、一冊まるごとの本があるんだ」。そんな「ここにいていい」という感覚こそ、自信や好奇心が育っていく土台になります。
- 自己肯定感——自分が主人公になった子は、脇役ではなく「できる子」「物語の中心にいる子」として自分を思い描けるようになります。
- 集中と記憶——自分に関係のある物語だと感じると、子どもはより夢中になり、内容もよく覚えています。
- 共感力——そのうえで「窓」となる絵本は、自分とは違う人生を大切に思う心を育てます。鏡と窓は、二つでひとつなのです。
“本はときに窓であり……そしてまた、自分の暮らしが映る鏡でもあるのです。”
— ルディーン・シムズ・ビショップ博士
「自分ごと」だから、読む力が伸びる
読書の研究が繰り返し示しているのは、いつも同じこと——読む力を伸ばすのは「意欲」だということです。子どもは、自分が心から興味を持てる本ほどたくさん読み、長く集中し、語彙もぐんと増えていきます。わが子が主人公になった物語は、これ以上ないほど「自分ごと」の一冊。名前入りの絵本が、子どもがどこへ行くにも抱えて離さない一冊になりやすいのは、そんな理由からなのです。
多様な本が並ぶ本棚は、どんな子にも「鏡」を用意してくれます。オリジナル絵本は、そこからもう一歩。鏡に映るのは、まさにその子自身——名前も、顔も、その子そのものなのです。
「鏡」と「窓」がそろった本棚のつくり方
- 本棚を見直してみましょう。お子さんの本は、お子さん自身やご家族の姿を映し出していますか?
- 「鏡」となる本を加えましょう。お子さんと同じ背景や個性、家族のかたちを持つ主人公を探してみてください。
- 「窓」となる本を加えましょう。自分たちとは違う暮らしを描いた物語を、意識して取り入れましょう。
- 本当に特別な一冊を作りましょう。お子さんが名前入りの、絵に描かれた主人公になる本です。
多様性は「おまけ」ではなく、本題そのもの
どんな子にも、本を開いて自分自身に出会う権利があります。だからこそ、私たちはそれを使命そのものにしました。サンプルの本棚では、主人公は毎回ちがう子ども。そしてあなたが自分の一冊をつくれば、主人公はわが子になります。数合わせの登場人物ではなく、まぎれもない主役として。
この記事のポイント
- 「鏡」になる絵本は、子どもに自分の姿と「物語にいていい」という実感を与えます。「窓」になる絵本は共感力を育てます。
- 自分ごとだと感じる物語ほど、子どもはたくさん読み、よく覚えます——意欲こそが読む力を伸ばします。
- 鏡と窓、その両方を意識して本棚をととのえましょう。
- オリジナル絵本は、いちばん身近な「鏡」。名前も顔も、わが子そのものが主人公になります。
よくあるご質問
絵本における多様性は、なぜ大切なのですか?+
自分と似た主人公に出会うと、子どもは「ここにいていい」「一冊まるごと自分のための物語があるんだ」と感じ、自己肯定感と読書への意欲が育ちます。そのうえで多様な「窓」の絵本が、他者への共感を育んでいきます。
多様性は何歳ごろから意味を持ちますか?+
とても早い時期からです。まだ幼い子でも、自分や家族に似た顔やキャラクターに反応します。その「わたしみたい」という気づきが、集中力や本を好きになる気持ちを引き出します。
多様性のある絵本と、オリジナル絵本はどう違うのですか?+
多様性のある絵本は、わが子とどこか共通するアイデンティティを持つ主人公を届けてくれます。オリジナル絵本は、わが子そのもの——名前も顔も——を主人公にします。これ以上ないほど身近な「鏡」なのです。
執筆 The Hello Storybook Team, 親であり、書き手であり、物語を紡ぐ者たち.
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