Hello Storybook
おやすみと大きな気持ち

新しいおうちは、新しい冒険。引っ越しを乗り越える子どもへのサポート

The Hello Storybook Team · 親であり、書き手であり、物語の語り手2026年7月20日約8分で読めます
引っ越しトラックの前で、お気に入りのぬいぐるみを抱えた子どもが古いおうちに手を振り、遠くに新しいおうちが温かく光っているイラスト

廊下に積み上がったダンボール、玄関先に停まったトラック、がらんとした子ども部屋——見慣れた景色やいつもの習慣で世界を感じている小さな子にとって、引っ越しは大きな地殻変動です。引っ越しを乗り越える手助けを探しているなら、安心してください。まわりの大人がどっしりと構え、この変化に「名前」と「物語」と「かたち」を与えてあげれば、子どもは驚くほど柔軟に順応していきます。この記事では、年齢ごとに何が起こりやすいか、そして本当に移行を楽にしてくれる具体的な工夫をお伝えします。

引っ越しが、小さな子には「大事件」に感じられる理由

小さな子どもは、大人のようには気持ちの整理をつけられません。大人にとって引っ越しは、少し面倒だけれど、その先にわくわくする新生活が待っている——そんな段取りの問題です。でも4歳の子にとっての「おうち」とは、ベッドの上の天井にある、あの見慣れたひび割れであり、朝の光が台所の床に差し込む、あのお決まりの場所であり、毎日手を振っているお隣さんの犬なのです。そうした心の拠りどころを失うことは、子どもにとっては「安心そのもの」を失うように感じられることもあります。

だからこそ、それまで「あたらしいおうち」の話をにこにこと楽しそうにしていた子が、ガムテープで封をされたおもちゃ箱を見た瞬間、突然大泣きしてしまう、ということが起こります。「引っ越し」という抽象的なイメージは平気でも、自分の世界がバラバラにされていく具体的な体験には耐えられないのです。そんなとき、「お部屋がいつもと違って見えると、ちょっとさみしいよね」と、その気持ちを言葉にして受けとめてあげること。これは、「新しいおうちにはもっと広いお庭があるよ」といったどんな励ましよりも、ずっと子どもの心に届きます。

年齢によって受けとめ方はちがう

引っ越しへの向き合い方は、子どもの年齢によって大きく変わります。お子さんの発達段階に合わせて接し方を選べば、親も子もずいぶん気持ちがラクになります。

  • 1〜3歳ごろ:言葉の意味よりも、ママやパパの気持ちを敏感に感じ取ります。急に甘えん坊になったり、夜泣きや寝つきの悪さが出たり、トイレの失敗が増えたり、また哺乳瓶をほしがったりと、ちょっと赤ちゃん返りすることも。生活のリズムはできるだけ今までどおりに保ってあげてください。
  • 3〜5歳ごろ:いろいろわかるようになる一方で、足りない部分を想像でうめてしまいます。「前のおうちがさみしがるんじゃないか」「置いていくおもちゃがかわいそう」といった不安を口にする子も。そんな空想じみた言葉も真剣に受けとめて、やさしく答えてあげましょう。
  • 5〜8歳ごろ:仲のよいお友だちや慣れた学校と離れることを、本気で悲しみます。この年齢の子はとにかく事実を知りたがります。「どのくらい遠いの?」「お友だちにまた会える?」「新しいお部屋はどんな感じ?」。明るくはげますよりも、具体的に答えてあげるほうが不安はやわらぎます。
  • 8〜10歳ごろ:「自分で決められる」という手ごたえをもたせてあげてください。部屋のレイアウトに意見を出す、荷造りを手伝う、お友だちと連絡を取り合う方法を一緒に考える、など。この年ごろの子にとっていちばんつらいのは、自分では何もできないと感じることです。

引っ越しの話は、早めに・正直に・くり返し

引っ越しが決まったら、直前ではなく、できるだけ早いうちに子どもに伝えましょう。子どもは、気持ちを整理する時間があるほど、大きな変化を上手に受け止められます。逆に、親の電話をたまたま耳にして知る、といった伝わり方をすると、「どうして教えてくれなかったの」と不信感の芽になってしまいます。伝えるときは、シンプルで正直な言葉を選んでください。たとえば「お誕生日が終わった春ごろに、同じ町の新しいおうちに引っ越すんだよ」というふうに。

そして、一度伝えたら終わりにせず、いつでも話せる状態にしておきましょう。お絵かきをしているとき、車での移動中、お風呂の時間など、何かのついでにさらりと話題に出すのがコツです。そうすることで、「大きくて怖い発表」ではなく、ふだんどおりの話題のひとつになっていきます。もしお子さんが、心の中で渦巻く気持ちをうまく言葉にできずにいるようなら、子どもが気持ちを言葉にできるようになる方法のガイドが役立ちます。引っ越しの場面でそのまま使える声かけの例も紹介しています。

質問の奥にある「本当の問い」に答える

子どもが「ぼくのベッドも持っていくの?」と聞くとき、たいてい家具のことを気にしているわけではありません。本当に聞きたいのは「わたしの世界も、いっしょについてきてくれる?」ということなのです。だからまず言葉どおりの質問に答え、それから気持ちのほうにも答えてあげましょう。「もちろん持っていくよ。ベッドも、お気に入りのお布団も、絵本も、ぜんぶいっしょ。あなたの大切なものは、これからもずっとあなたのものだからね」というふうに。

「お仕事」と「さよなら」をセットで用意する

不安をやわらげる一番の薬は、「自分で選べる」「自分にもできることがある」という感覚です。自分のおもちゃを箱に詰めるお手伝いをして、シールで印をつけ、その同じ箱が新しいおうちに届くのを見つける——こうした体験を通して、子どもは引っ越しを「自分に降りかかってくる出来事」ではなく、「自分も一緒につくっている出来事」として受けとめられるようになります。

そして同じくらい大切なのが、きちんと「さよなら」をすること。ちょっとした儀式があると、子どもはひとつの章をきれいに閉じることができ、心のどこかを開いたまま置き去りにせずにすみます。たとえば、こんなことを試してみてください。

  • 何もなくなったおうちの中を一緒に歩いて、部屋ひとつひとつに「ありがとう」と声に出して言う。
  • お気に入りの場所で子どもの写真を撮り、「まえのおうち」のミニアルバムをつくる。
  • クローゼットの奥など目立たない壁に、子どもの手の形をなぞって描く。ふたりだけの秘密として残しておく。
  • 仲よしのお友だちを呼んで、小さなお別れ会を開く。友情が急にプツンと切れるのではなく、あたたかい気持ちで区切りをつけられるように。
  • 何か植物を植えたり、次に住むご家族へのメッセージを残したりする。

新しい家を、すぐに「わが家」にする工夫

引っ越しで一番の安心につながるのは、子ども部屋を真っ先に整えてあげることです。キッチンよりも、大人の寝室よりも先に。新しい家での初めての朝を、見慣れたおもちゃや、いつもの並べ方に囲まれて迎えられれば、それだけで「ここはあなたの居場所だよ」というメッセージが、どんな言葉よりも強く子どもの心に届きます。

引っ越しの最中も、お気に入りのものはすぐ取り出せるようにしておきましょう。あの決まった毛布、豆電球、毎晩読んでいる3冊の絵本。新しい家では寝かしつけがうまくいかなくなることもよくあります——1〜2週間ほど崩れるのはめずらしくありません。そんなときこそ、新しいやり方を編み出そうとせず、これまでの寝る前のルーティンにそのまま頼ってあげてください。「いつもと同じ」であること、それこそが安心の源なのです。

子どもに必要なのは、変化を小さくしてもらうことではありません。「自分ならこれを乗り越えられる」と思えるくらい、自分を大きく感じられることです。私たち大人の役目は、子どもをこの物語の主人公にしてあげること。ただ連れて行かれる乗客にしないことなんです。

あるファミリーセラピストの言葉

引っ越しを「お子さんが主人公の物語」にしてしまう

子どもは、大きな変化を「お話」を通して受け止めていくものです。だからこそ「新しい冒険のはじまり」という語りかけがうまくいきます。ただし、それは正直であること——わくわくする気持ちと、さみしい気持ちの両方をちゃんと抱えていることが条件です。引っ越しの数週間前から、引っ越しをテーマにした絵本を一緒に読んでみましょう。テーマそのものが身近になり、「これは乗り越えられることなんだ」と感じられます。読みながら、「この子、はじめはこわかったけど、だんだん大丈夫になっていったね」と、登場人物の気持ちの移り変わりについて話してみてください。

さらに一歩進めるなら、お子さん自身を引っ越しの物語の主人公にしてしまう方法があります。今まで住んでいたおうちを離れ、本当の気持ちを味わい、そして新しいおうちのすてきなところを見つけていく——そんな名前入りの絵本は、お子さんが自分の体験をたどるための「台本」になり、同時に「あなたは勇気あることをやりとげたんだよ」とはっきり伝えてくれる、一生の宝物になります。画面を使わない、やさしいやり方で、変化を前もって心の中でリハーサルし、そして終わったあとにはその頑張りをお祝いできます。(どんな仕上がりになるかはサンプルのお話からご覧いただけます。)

新生活に慣れるまでの「揺り戻し」を、あたたかく見守る

引っ越しが済んだからといって、すぐに気持ちが落ち着くわけではありません。数週間ほどは、いつもより怒りっぽくなったり、見慣れない家で夜に悪い夢を見たり、荷物がすっかり片づいたあとになって突然「前のおうちに帰りたい」と言い出したりすることもあります。これは決して選択を間違えたサインではなく、お子さんが自分なりに寂しさを消化している自然な過程です。これまでどおりの生活リズムを守り、「寂しいよね」と気持ちに名前をつけてあげながら、焦らず時間をかけてあげてください。多くの子どもは1〜2か月ほどで新しい環境になじみ、片づけが終わらないうちに「こっちのおうちのほうがいい!」と、うれしい驚きを口にしてくれることも少なくありません。

この記事のポイント

  • 引っ越しのことは早めに伝え、言葉の裏にある気持ちの疑問にこそ答えてあげましょう。
  • 荷造りで子どもに「本当の役割」を与え、前のおうちにきちんとお別れをする儀式をつくりましょう。
  • 新居ではまず子ども部屋を整え、安心グッズは箱に入れずそばに置いて移行の支えにしましょう。
  • 引っ越し後の数週間は情緒が揺れて当たり前。習慣を崩さず、根気よく寄り添いましょう。

よくあるご質問

引っ越しに戸惑う子どもをどう支えればいいですか?+

早めに正直に伝え、自分の荷物の荷造りに参加させてあげましょう。前のおうちへのお別れの儀式をつくり、新居ではまず子ども部屋を整えます。毎日の習慣は最後まで変えず、気持ちを言葉にして受けとめ、この変化を「あなたが主役の前向きな物語」として語ってあげることが大切です。

引っ越し後、子どもが慣れるまでどのくらいかかりますか?+

多くの子は4〜8週間ほどで落ち着きますが、幼児や未就学児は甘えが強くなったり、寝つきが乱れたり、赤ちゃん返りのような様子がもう少し続くこともあります。習慣を変えずに保ち、機嫌の悪さやホームシックに根気よく付き合うことで回復は早まります。この揺れは異常ではなく、ごく自然なものです。

誕生日や新しい赤ちゃんなど大きな出来事の前と後、どちらに引っ越すべきですか?+

可能なら、大きな変化を重ねないのが理想です。引っ越しには引っ越しだけの時間を用意し、子どもが一度に一つの変化を消化できるようにしましょう。どうしても時期が重なる場合は、まわりの習慣をいつも以上に安定させ、慣れ親しんだ安心グッズに頼って、子どもの負担を減らしてあげてください。

執筆 The Hello Storybook Team, 親であり、書き手であり、物語の語り手.

← 記事一覧
おはなしクラブ

気に入ったら、次の記事もどうぞ。

読み聞かせの新しいアイデア、子育てのやさしい読みもの、新テーマへの購読者限定先行公開をお届けします。メールは月に数回だけです。

読み聞かせのアイデアと先行公開が無料で届きます。迷惑メールは送りません。いつでも解除できます。

お子さまが、自分だけの物語の主人公に。

写真を1枚アップロードするだけで、数分で絵本が完成。デジタルでも、印刷した記念の一冊でも残せます。

絵本をつくる →